メタプログラミング
メタプログラミングとはコード自体にコードを記述させる機能です。Elixirでは、メタプログラミング機能によりニーズに合わせて言語を拡張し、動的にコードを変更することができます。Elixirが内部でどのように表現されるかを見ることから始めましょう。次にそれを修正する方法を学び、そして最終的に拡張するためにこの知識を使用してみましょう。
注意事項: メタプログラミングはトリッキーで、どうしても必要な場合にのみ使用してください。過度の使用は、ほぼ確実に、理解及びデバッグすることが困難な複雑なコードにつながります
Quote
メタプログラミングするための最初のステップは、式が表現される方法を理解することです。Elixirでは抽象構文木(AST)(コードの内部表現)は、タプルで構成されています。タプルは、右記3つの要素で構成されます : 関数名、メタデータ、関数の引数
これらの内部構造を見るために、Elixirは quote/2
関数を提供しています。 quote/2
を使い、Elixirのコードをその基礎となる表現に変換することができます:
iex> quote do: 42
42
iex> quote do: "Hello"
"Hello"
iex> quote do: :world
:world
iex> quote do: 1 + 2
{:+, [context: Elixir, import: Kernel], [1, 2]}
iex> quote do: if value, do: "True", else: "False"
{:if, [context: Elixir, import: Kernel],
[{:value, [], Elixir}, [do: "True", else: "False"]]}
注意点として、最初の3つはタプルを返しません。以下の5つのリテラルはquoteされた時に自分自身を返します:
iex> :atom
:atom
iex> "string"
"string"
iex> 1 # All numbers
1
iex> [1, 2] # Lists
[1, 2]
iex> {"hello", :world} # 2 element tuples
{"hello", :world}
Unquote
今、コードの内部構造を検索することができましたが、どのようにそれを修正しましょう?新しいコードまたは値を注入するために、 unquote/1
を使用します。式をunquoteすると、それが評価され、ASTに注入されます。 unquote/1
を実証するために、いくつかの例を見てみましょう:
iex> denominator = 2
2
iex> quote do: divide(42, denominator)
{:divide, [], [42, {:denominator, [], Elixir}]}
iex> quote do: divide(42, unquote(denominator))
{:divide, [], [42, 2]}
最初の例では変数 denominator
は、結果として得られるASTが変数にアクセスするためのタプルを含んでいるようにquoteされています。 unquote/1
の使用例では生成されたコードに denominator
の値が含まれています。
マクロ
quote/2
と unquote/1
を理解すれば、マクロに飛び込む準備が整います。マクロのようなすべてのメタプログラミングは、慎重に使用する必要があることを覚えておくことが重要です。
最も簡単な用語であるマクロは、私たちのアプリケーションコードに挿入されるquoteされた式を返すように設計された特別な機能です。マクロは関数のように呼び出されるのではなく、quoteされた表現に置き換えられるのだということを想像してみてください。マクロで、私たちはElixirを拡張し、動的に私たちのアプリケーションにコードを追加するために必要なすべてを持っています。
defmacro/2
を使用してマクロの定義から始めます。 defmacro/2
自身がマクロであり、Elixrの多数の機能がマクロで出来ています。例として、 unless
をマクロとして実装します。マクロはquoteされた式を返す必要があることを忘れないでください:
defmodule OurMacro do
defmacro unless(expr, do: block) do
quote do
if !unquote(expr), do: unquote(block)
end
end
end
早速作ったモジュールをrequireして使ってみましょう:
iex> require OurMacro
nil
iex> OurMacro.unless true, do: "Hi"
nil
iex> OurMacro.unless false, do: "Hi"
"Hi"
マクロは我々のアプリケーションのコードを置き換えているので、コンパイル時にどのような制御でもすることができます。この例は Logger
モジュールで見ることができます。ロギングは無効になっていると何のコードも注入されず、結果としてアプリケーションにログ用の関数呼び出しや参照が含まれていません。これは、実装がNOP(処理なし)であっても、関数呼び出しのオーバーヘッドがまだある他の言語とは異なります。
これを実証するために、有効または無効にすることができる、簡単なロガーを作ってみます:
defmodule Logger do
defmacro log(msg) do
if Application.get_env(:logger, :enabled) do
quote do
IO.puts("Logged message: #{unquote(msg)}")
end
end
end
end
defmodule Example do
require Logger
def test do
Logger.log("This is a log message")
end
end
ロギングを有効にすると、 test
関数は、このコードのような結果になります:
def test do
IO.puts("Logged message: #{"This is a log message"}")
end
しかしロギング無効にした場合、結果のコードは次のようになります:
def test do
end
デバッグ
たった今 quote/2
や unquote/1
の使い方を知り、マクロを書きました。しかし、もし巨大なquoteされたコードがあり、それを理解したい場合はどうすればいいでしょうか?このような場合、 Macro.to_string/2
を使うことができます。次の例を見てください:
iex> Macro.to_string(quote(do: foo.bar(1, 2, 3)))
"foo.bar(1, 2, 3)"
マクロで生成されたコードを見たいときは、与えられたquoteされたコードのマクロを展開する Macro.expand/2
や Macro.expand_once/2
と組み合わせます。前者はマクロを複数回展開するかもしれませんが、後者は一度だけ展開します。例えば、前のセクションの unless
の例を変更してみましょう:
defmodule OurMacro do
defmacro unless(expr, do: block) do
quote do
if !unquote(expr), do: unquote(block)
end
end
end
require OurMacro
quoted =
quote do
OurMacro.unless(true, do: "Hi")
end
iex> quoted |> Macro.expand_once(__ENV__) |> Macro.to_string |> IO.puts
if(!true) do
"Hi"
end
しかし、同じコードを Macro.expand/2
で実行すると、興味深い結果になります:
iex> quoted |> Macro.expand(__ENV__) |> Macro.to_string |> IO.puts
case(!true) do
x when x in [false, nil] ->
nil
_ ->
"Hi"
end
もしかしたら if
はElixirのマクロであると述べたのを思い出したかもしれません。これを見れば if
が基本的な case
文に展開されるのが分かります。
プライベートマクロ
一般的ではないものの、Elixirは、プライベートなマクロをサポートしています。プライベートマクロは defmacrop
で定義され、それが定義されたモジュールから呼び出すことができます。プライベートマクロはそれを呼び出すコードの前に定義する必要があります。
衛生的なマクロ
衛生なマクロは展開したとき、呼び出し元のコンテキストとどの様に相互作用するのでしょう。デフォルトでElixirのマクロは衛生的であり、コンテキストと競合しません:
defmodule Example do
defmacro hygienic do
quote do: val = -1
end
end
iex> require Example
nil
iex> val = 42
42
iex> Example.hygienic
-1
iex> val
42
しかし、 val
の値を操作したい場合は?非衛生的な変数としてマークするために、 var!/2
を使用することができます。 var!/2
を利用して例を更新してみましょう:
defmodule Example do
defmacro hygienic do
quote do: val = -1
end
defmacro unhygienic do
quote do: var!(val) = -1
end
end
コンテキストとの相互作用を比較してみましょう:
iex> require Example
nil
iex> val = 42
42
iex> Example.hygienic
-1
iex> val
42
iex> Example.unhygienic
-1
iex> val
-1
var!/2
を含めることでマクロに val
を渡すことなく val
の値を操作できました。非衛生的なマクロの使用は最小限に抑える必要があります。 var!/2
を含めることで変数解釈の競合リスクを高めます。
Binding
すでに unquote/1
という便利なマクロを抑えておりますが、我々のコードに値を注入する別な方法があります: Bindingです。変数をbindするとマクロ内で複数の変数を含む場合に、一回のみquoteされ予想外の再評価を回避できます。変数をbindするために、 quote/2
内の bind_quoted
オプションにキーワードリストを渡す必要があります。
bind_quote
の利点を実証するために再評価の問題を抱えた例を見てみましょう。式を二度出力する単純なマクロを作成してみます:
defmodule Example do
defmacro double_puts(expr) do
quote do
IO.puts(unquote(expr))
IO.puts(unquote(expr))
end
end
end
現在のシステム時刻を渡して新しいマクロを試してみましょう。システム時刻が2回出力されるべきです:
iex> Example.double_puts(:os.system_time)
1450475941851668000
1450475941851733000
時間が異なっています!何が起こったのでしょう? unquote/1
を同じ式に対し複数回使うことで、再評価され予期しない結果になることがあります。 bind_quoted
を使用して例題を更新し、どうなったか見てみましょう:
defmodule Example do
defmacro double_puts(expr) do
quote bind_quoted: [expr: expr] do
IO.puts(expr)
IO.puts(expr)
end
end
end
iex> require Example
nil
iex> Example.double_puts(:os.system_time)
1450476083466500000
1450476083466500000
bind_quoted
によって期待される成果を得ました: 同じ値が二回出力されています。
これでカバーしてきた quote/2
, unquote/1
, defmacro/2
により、ニーズに合わせてElixirを拡張するために必要なすべてのツールを持ちました。
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