並行性
Elixirの売りの1つは並行性(コンカレンシー)に対応していることです。 Erlang VM (BEAM)のおかげで、並行処理はElixirでは思ったよりも簡単です。 並行性のモデルはアクターに依存しています。アクターとはメッセージパッシングによって他のプロセスと相互通信を行う、制御されたプロセスのことです。
このレッスンではElixirとともに納められている並行モジュールを見ていきます 続く章では並行モジュールを実装しているOTPの振舞を取り扱います。
プロセス
Erlang VM (BEAM)内のプロセスは軽量で、全てのCPU間で実行されます。 ネイティブスレッドのように見えますがそれより単純ですし、Elixirアプリケーション内に数千もの並行プロセスを持つことは珍しくありません。
新しいプロセスを作る最も簡単な方法は、匿名/名前付き関数を引数に取る spawn
です。
新しいプロセスが作られると、 プロセス識別子 別名PIDが返ります。これはアプリケーション内部でプロセスを一意に識別するものです。
手始めに、モジュールを作り実行したい関数を定義します:
defmodule Example do
def add(a, b) do
IO.puts(a + b)
end
end
iex> Example.add(2, 3)
5
:ok
この関数を非同期的に評価するには、 spawn/3
を用います:
iex> spawn(Example, :add, [2, 3])
5
#PID<0.80.0>
メッセージパッシング
相互通信をするのに、プロセスはメッセージパッシングを頼ります。
これには2つの主な部品、 send/2
と receive
があります。
send/2
関数を使うとメッセージをPID宛に送ることができます。
受信するには receive
を使ってメッセージをマッチし、マッチするものが見つからない場合は中断されずに実行中のままとなります。
defmodule Example do
def listen do
receive do
{:ok, "hello"} -> IO.puts("World")
end
listen()
end
end
iex> pid = spawn(Example, :listen, [])
#PID<0.108.0>
iex> send pid, {:ok, "hello"}
World
{:ok, "hello"}
iex> send pid, :ok
:ok
listen/0
関数が再帰的であることに気づいたかもしれません。これはプロセスで複数のメッセージを扱うためです。
再帰がないと、プロセスは初めのメッセージを受け取り処理した後に終了するでしょう。
プロセスのリンク
spawn
の問題の1つとして知られているのは、プロセスが強制終了した場合です。
これに備えるためには、複数プロセスを spawn_link
でリンクする必要があります。
二者間でリンクしたプロセスはプロセス終了の通知をお互いに受け取ります(訳注: つまりどちらのプロセスも終了します。):
defmodule Example do
def explode, do: exit(:kaboom)
end
iex> spawn(Example, :explode, [])
#PID<0.66.0>
iex> spawn_link(Example, :explode, [])
** (EXIT from #PID<0.57.0>) evaluator process exited with reason: :kaboom
リンクしたプロセスに現在のプロセスを強制終了させたくない場合もあるでしょう。
そのためには Process.flag/2
使用して終了を捕捉する必要があります。この関数は trap_exit
フラグのためにErlangの process_flag/2 関数を使います。終了を捕捉すると(trap_exit
が true
になっている)、 {:EXIT, from_pid, reason}
というタプルのメッセージとして受け取ります。
defmodule Example do
def explode, do: exit(:kaboom)
def run do
Process.flag(:trap_exit, true)
spawn_link(Example, :explode, [])
receive do
{:EXIT, _from_pid, reason} -> IO.puts("Exit reason: #{reason}")
end
end
end
iex> Example.run
Exit reason: kaboom
:ok
プロセス監視
2つのプロセスをリンクせずに、しかし通知はそのまま維持したいとすると、どうでしょうか。そうした場合には spawn_monitor
でプロセス監視を用いることができます。
プロセスを監視すると、プロセスが強制終了した際にメッセージを受け取ります。現在のプロセスを強制終了させたり、プロセス終了時に明示的な捕捉をする必要はありません。
defmodule Example do
def explode, do: exit(:kaboom)
def run do
{pid, ref} = spawn_monitor(Example, :explode, [])
receive do
{:DOWN, _ref, :process, _from_pid, reason} -> IO.puts("Exit reason: #{reason}")
end
end
end
iex> Example.run
Exit reason: kaboom
:ok
Agent
Agentは状態を維持するバックグラウンドプロセス周りを抽象化したものです。 アプリケーションやノードの内部で他のプロセスからAgentに接続することができます。 Agentの状態は関数の戻り値に与えられます:
iex> {:ok, agent} = Agent.start_link(fn -> [1, 2, 3] end)
{:ok, #PID<0.65.0>}
iex> Agent.update(agent, fn (state) -> state ++ [4, 5] end)
:ok
iex> Agent.get(agent, &(&1))
[1, 2, 3, 4, 5]
Agentに名前を付けると、PIDの代わりに名前で参照することができます:
iex> Agent.start_link(fn -> [1, 2, 3] end, name: Numbers)
{:ok, #PID<0.74.0>}
iex> Agent.get(Numbers, &(&1))
[1, 2, 3]
Task
Taskは関数をバックグラウンドで実行し、後でその戻り値を受け取る方法を提供します。 アプリケーションの動作を妨げることなく、実行コストの高い演算を処理する時に特に役立てることができます。
defmodule Example do
def double(x) do
:timer.sleep(2000)
x * 2
end
end
iex> task = Task.async(Example, :double, [2000])
%Task{
owner: #PID<0.105.0>,
pid: #PID<0.114.0>,
ref: #Reference<0.2418076177.4129030147.64217>
}
# 何か処理を行う
iex> Task.await(task)
4000
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